ディプティック

ディプティックは、1961年にパリ・サンジェルマン通りのブティックから始まった「香りのアーティスト集団」で、旅先の風景や記憶をボトルに封じ込める詩的アプローチが特徴です。キャンドルやルームフレグランスで築いた香りの世界観を、1990年代以降はコロン~オードパルファム濃度のパフュームへと拡張し、ハーブ・ウッド・果実を“水彩画のような透明感”で重ねるユニセックス調香が世界中で高い支持を得ています。

代表作と香調ハイライト

  • フィロシコス:青いイチジクの果実、樹皮、葉、さらには乾いた土までを写実的に描いた“丸ごとイチジクの木”。シダーが木陰のドライさを添え、真夏の地中海を想起させます。
  • タムダオ:マイソール産サンダルウッドのミルキーな甘さに、サイプレスとマートルが涼やかな影を落とすウッディ・アロマ。寺院の香木を思わせる静けさが魅力です。
  • ドソン:チュベローズ、オレンジブロッサム、ジャスミンが海風と混ざり合い、ほのかなスパイスとアンバーウッドが夕暮れの浜辺を描く“潮風のチューベローズ”。
  • オーデュエル:バーボンバニラを主役にピンクペッパーやインセンスをひそませた“甘くも辛いバニラ”。南洋と砂漠を往来する旅の情景を映します。
  • オーローズ:ダマスクローズとセンティフォリアローズにライチの果汁感をかけ合わせ、ムスクで柔らかく仕上げた“朝摘みローズティー”。
  • オルフェオン:ジュニパーベリーのジン調アコードにトンカビーンズとシダーが重なる“アールデコのナイトバー”。ジャスミンがほのかに漂い、温かさとクールさが共存します。

ディプティックらしさと評価

ディプティックの香りは、トップで果実やハーブの写実的な瑞々しさを提示し、中盤からウッディや樹脂が穏やかに広がる三層構造が多く採用されています。軽やかなのに奥行きがあり、肌に近い投影ながら5〜6時間ほど細く長く香るため、「日常に詩的な余白をもたらす」と愛好家から高評価を受けています。ブランドが推奨するキャンドルやボディ製品とのレイヤリングも人気で、“部屋と人が同じ物語を纏う”スタイルが現代的ライフスタイルに調和している点も、ディプティックが根強い支持を得る理由と言えるでしょう。