ゼラニウムってどんな香り?(おすすめ香水も)

ゼラニウム

“バラに似てバラにあらず”──爽やかさとグリーン感が光る万能ミドルノート

ゼラニウムとは

一般に「ゼラニウム」と呼ばれる香料は Pelargonium graveolens (ローズ・ゼラニウム)などの葉を水蒸気蒸留して得る精油です。19世紀からローズオイルの代替や補強として大量に栽培され、現在も調香に欠かせない素材の一つです。香料としてはエジプトと中国が2大産地になっています。

その香りは葉っぱにあります。

ゼラニウムの葉っぱ

花は殆ど香りはありません。主に水蒸気蒸留で精油を得ます。

ゼラニウムの香り

ローズゼラニウム(実物)
  • フローラル: ローズを思わせる甘い花香
  • グリーン/ハーバル: 刈りたての草やハーブの青み
  • シトラス: レモン様のジューシーさ
  • ミント/スパイス: ほのかな冷涼感と黒コショウ様のアクセント

ゼラニウムの香りはローズゼラニウムの名の通り、ローズによく似ているフローラルな香りがメインです。

ローズ様の香り

特にゼラニウムとローズから共通して抽出されるゲラニオール、シトロネロールなどの成分がローズ様の香りをもたらします(ゲラニオールは、ミツバチが蜜のある花に印をつけるために分泌する成分)。

ゼラニウムはハーバル・ミントの冷涼感なども合わせ持つ

ゼラニウムはそんなローズのフローラルな香りに加えて、ハーバル・ミントの冷涼感なども合わせ持ちます。

ゼラニウムは男性向け、またはユニセックスな香り

この軽やかな立体感が真骨頂で、伝統的にローズは女性寄りなのに対して、ゼラニウムは男性寄りまたはユニセックス寄りな魅力を備えていると知っておくとわかりやすいと思います。

香気を形づくる主成分とそのキャラクター

主成分含有量(エジプト産例)香調への寄与
シトロネロール20–40 %ローズ様の甘さ・柔らかさ
ゲラニオール5–20 %フローラル+わずかなシトラス
リナロール2–15 %フレッシュなフローラルウッディ
メントン2–12 %ハーバルで冷涼感のあるミント

ポイント

  • シトロネロール/ゲラニオール が“ローズらしさ”の正体。
  • メントン系 がハッとするミント感を生み、ゼラニウムを単なるローズコピー以上の個性にしている。

産地・品種で香りはこう変わる

産地・タイプ香りの特徴使われ方の傾向
ブルボン(レユニオン島)やわらかく甘いローズ調、軽いシトラス高級フローラルやシプレ系
エジプトグリーンでハーバル、ややミントフレッシュ系、サマー向け
中国スパイシーで力強い、ペッパリーユニセックス/メンズ

香水の中での役割

  1. ミドルノートの“ブリッジ”
    • 柑橘のトップとウッディ・ムスクのベースを滑らかにつなぐ“ハブ”として機能しやすい。
  2. フゼアアコードの核
    • 古典的フジェールは「ベルガモット+ラベンダー+ローズ/ゼラニウム+オークモス+クマリン」が基本形。
  3. ローズの補強・コストダウン
    • ローズ精油より安価で、類似成分を含むため“ローズブースター”として多用される。

相性の良いノート

相性の良いノート仕上がりの印象
柑橘(ベルガモット・レモン)ジューシーで朝向きの爽快感
アロマティックハーブ(ローズマリー・タイム)シャープさと清潔感を強調
ウッディ(シダー・サンダルウッド)温かみと落ち着きを付与

Pairfum London は「ゼラニウムは幅広いノートと“ハーモナイズ”し、香りをまろやかにする」と解説しています。

ゼラニウムが主役/印象的に使われているフレグランス

ゼラニウムが主役/印象的に使われているフレグランス
ブランド & フレグランスゼラニウムの役割・出方
フレデリック マル
ローズ&キュイール (2019)
ブルボン・ゼラニウムを高濃度で用い、実際のローズ原料を一切使わず、ローズらしさを再構築。トップの青く鋭い葉香がレザーへ滑り込む。
シャネル
エゴイスト プラチナム(1993)
ラベンダーの立ち上がりを受けて、メタリックでクリーンなゼラニウムがミドルを主導。クラシック・フジェールの教科書的使い方。
ディプティック
ゼラニウム オドラタ(2014)
瑞々しいゼラニウムの葉脈を前面に、フローラルよりもグリーンを強調した軽快ソロノート。
THREE
エッセンシャルセンツ(2022)
熊本・南阿蘇産オリジナルゼラニウム精油をシリーズ全7作の芯に据えたアロマフレグランス。

まとめ ― こんなときにゼラニウムが使われている

シーン/目的ゼラニウムを使うと…
ローズ系をコストダウン同系統成分で“バラらしさ”を補強
ユニセックス/メンズをフレッシュにミントとグリーンで清潔感アップ
柑橘トップが単調に感じるハーバルで奥行きを追加し、持続も向上
重いウッディを軽くしたい中間に挟んで甘さと透明感をプラス

ローズに似ていながら、青み・ミント感・シトラス感が混ざることで“軽やかな立体感”を生む――それが香料ゼラニウムの真骨頂です。調香でもセルフブレンドでも、ぜひその万能ミドルノート力を実感してみてください。