ブラックペッパー、ピンクペッパーってどんな香り?違いは?

ブラックペッパーとピンクペッパー

ブラックペッパーとピンクペッパーの違い同じ「ペッパー」でも別物

  • ブラックペッパー:コショウ科のコショウの未熟果を乾燥させたスパイス。
  • ピンクペッパー:ウルシ科のコショウボクの赤い果実(ベイローズ)。植物学的には胡椒ではなく、香りも構造もまったく異なる。

ピンクペッパーは赤く熟した胡椒の実と似ているのでペッパー、その木もコショウの名を冠していますが、完全な別物です。ピンクペッパーは料理だとカルパッチョにそえられることが多いですね。

↓コショウ

ブラックペッパーの実

↓コショウボク(ベイローズ)

コショウボクの実

ブラックペッパーの香り

感覚的特徴典型的な表現
トップ熱を帯びた鋭いスパイス、舌を刺激する“チリチリ感” 
ハートドライウッディ、僅かな土っぽさとシトラスの陰影
余韻温かみのある樹脂様ウッディ、やや甘さを感じる

乾いた熱を持つウッディなスパイスです。シトラスを感じるトップから熱を持つミドルにかけて数時間残り、香りにコクと温度感を足す炭火みたいな役割。精油の香りは食卓のブラックペッパーの香りより濃厚で、よりウッディです。ウッディ・アンバーの空気を温かくしたり、フゼアとも相性が良いです。

ブラックペッパーの香りの移り変わり

主要成分は産地・抽出法で揺らぎますが、β‑カリオフィレンとモノテルペン群(リモネン等)の比率で香気の重さが決まります。

ピンクペッパーの香り

感覚的特徴典型的な表現
トップシュワッとした発泡感、ベリーを思わせるフルーティで軽いスパイス
ハートローズ様のフローラル、パウダリーにならない“ドライローズ”ニュアンス 
余韻透明感のあるウッディスパイス、シトラスピールのほろ苦さ

ピンクペッパーは、シトラスとローズに似た香りがはじける上品なスパイスです。香りのトップを明るく短時間で拡散する花火役。フローラル、グルマンの香水のアクセントになったり 特にローズの香りを軽やかに、現代的にする役割で使われます。

ピンクペッパーの香りの移り変わり

モノテルペン主体で揮発が速く、トップノート専用と言われます。リモネンが高いロットほどシトラス調、δ‑3‑カレンが高いとグリーン寄りの印象。

ブラック vs ピンク ― 香りの比較表

項目ブラックペッパーピンクペッパー
主体化学β‑カリオフィレン(セスキテルペン)中心で“重さ”リモネン・δ‑3‑カレン(モノテルペン)中心で“軽さ”
香調暖かく土っぽい辛味、ウッディフルーティでローズ様、発泡感
使われるノートウッディ・レザー・アンバーのコアをまとめるシトラス・フローラルをモダンに引き上げる
相性ベチバー、パチュリ、インセンスベルガモット、ローズ、ホワイトムスク
役割“温度”と深みを与える“スパークリング感”とライトさを与える

分子が重いブラックペッパーは持続する熱 軽いピンクペッパーは瞬間のきらめき 2つを合わせるときらめきから余熱への立体的なスパイス感が楽しめます。

ブラックペッパーの香水

ブラックペッパーのおすすめ香水
ブランド/香水ここがポイント
コムデギャルソン/ブラックペッパー (2016)・トップからベースまでブラックペッパーが貫く “黒胡椒そのもの” のアコード。
・ウードやシダーの深みで、スパイスが単調にならず奥行きが出る。
・秋冬のダークウェアと好相性、ジェンダーを選ばない。 
モルトンブラウン/ブラックペッパー (2015)・黒胡椒・レモン・ジンジャーで始まる爽快なスパイス。
・ミドルのコリアンダーとバジルが“黒胡椒の辛さ”をハーブで和らげ日常使いしやすい。
・出勤前のシャワー後にひと吹きすると清潔感ある辛口シトラスへ。 

ピンクペッパーの香水

ピンクペッパーのおすすめ香水
ブランド/香水ここがポイント
メゾン マルジェラ/ジャズクラブ (2013)・ピンクペッパー・ネロリ→ラム&ベチバー→タバコ&バニラ。
・ブークラウンジのカクテルとシガーを再現。
・夜のバー/ライブハウス。
モルトンブラウン/ピンクペッパー (2019)・ピンクペッパー・ジンジャー・タンジェリンが弾け、スズラン・金木犀→シダー&パチュリ。
・爽やかな辛口シプレ。
・昼の街歩き/軽快なデート。

まとめ

  • ブラックペッパーは「温かくウッディなスパイス」。β‑カリオフィレンの厚みで深みを出し、香りに立体感を持たせる。
  • ピンクペッパーは「ベリー入りローズスパイス」。リモネン主体のライトな揮発で香りを跳ね上げ、現代的なキレを生む。
  • 両者は“重さと軽さ”“熱と泡”という対極的個性を持つため、組み合わせると複雑さが劇的に増す。

調香師はこのコントラストを巧みに利用し、香水に「刺激とエレガンスの二面性」を与えている。次にフレグランスを選ぶときは、ラベルの「ペッパー」がブラックかピンクか――その違いにぜひ注目してみてください。

様々なペッパーの精油

ペッパーには他にもホワイトペッパーやティムットペッパー(ネパールペッパー)などがあります。ホワイトペッパー、グリーンペッパーはブラックペッパーと同じ実です。