ベチバー(ベチベルソウ)ってどんな香り?

ベチバー

ベチバーは、インド原産のイネ科植物の根から採れる精油です。香料としての最大供給地はハイチ、他にインドネシア(ジャワ島)が有名です。和名はカスカスガヤ。これはインドでのベチバーの名称「カス」、意味は「香り高い根」から来ています。

ベチバーの根っこ

育つとさらに根は伸びますが 油分が減少するので香料としては適さなくなります(土石流防止の土留めとしても活用される)。

香水では土っぽい、ウッディ、スモーキーといった深みのあるベースノートとして親しまれています。持続性と固定力が高いためシトラスやフローラル、スパイスなど幅広いトップ・ミドルノートと好相性で、ジェンダーレスに使える素材です。

ベチバーの精油

ベチバーの精油

根を蒸留して得られる精油が香水原料になります。とても粘度が高い精油です。

香りを構成する要素が多く、複雑です。その複雑さゆえに、育った地域によって香調が異なり、ハイチ産はクリーンでグリーン、インドネシア(ジャワ)産はスモーキーでビターという傾向があり、雨上がりの森や鉛筆の削り屑、焚き火の灰の残り香を思わせます。

香りの特徴をやさしく解説

キーワードイメージ
Earthy(土っぽい)雨上がりの森の湿った土
Woody(ウッディ)鉛筆を削ったときの香り
Smoky(スモーキー)遠くの焚き火の灰
Green(グリーン)乾いた芝生をもむ
Fresh(フレッシュ)朝露を含んだ草束

男性向け?ユニセックス?

ベチバーは“男性的”と紹介されがちですが、香り自体に性別はなくニュートラルです。

確かに1957年のカルヴェンのベチバー、1959年のゲランのベチバー誕生以降 端正な男性像を演出するウッディノートの代表格として愛されてきました。

しかし、21世紀に入ると ユニセックスな提案も相次いでいます。

人気の代表的ベチバー香水

ブランド・名称ベチバーの表情
ゲランのベチバー (1959)シトラスとスパイスをまとったクラシックでエレガントな土香。
エルメスのテールドゥエルメス (2006)オレンジピール×ミネラル感でモダンな“乾いた大地”。
トムフォードのグレイベチバー (2009)グレープフルーツの爽快さと洗練されたドライウッド。
イソップのタシット (2015)バジルとゆずにクリーンなベチバー。
ル ラボのベチバー 46 (2006)スパイシーで教会の燻香を思わせる濃厚さ。
ディプティックのヴェチヴェリオ(2010/2017)ベチバーの香りをグレープフルーツ・ローズでユニセックスに。
フレデリックマルのベチベル エクストラオーディネール(2002)全体の25%がベチバーという圧倒的な構成。

ベチバーが担う“影の立役者”

ベチバー精油にはベチベロールやベチベノンなど高分子成分が多く、揮発が遅いため香りを“留める”固定剤として重要です。この持続力がトップノートの柑橘やハーバルを下支えし、香水全体のバランスを安定させます。

季節もシーンも選ばない万能なベースとして全体の骨格を整えてくれるフィクサーです。

まとめ

ベチバーは土や木、煙を思わせる“地に足の着いた”香りでありながら、産地やブレンド次第でクリーンにもスモーキーにも表情を変えます。強い固定力ゆえ一本でも重ねても活躍し、初心者こそ少量を試香して自分好みのニュアンスを探るのがおすすめです。