ネロリ/オレンジブロッサムってどんな香り?違いは?

ビターオレンジの白い花が生む 2 つの香料
ネロリとオレンジブロッサムは、いずれもビターオレンジ(ダイダイ)の花から得られる原料です。17 世紀にイタリアのネローラ公妃アンナ・マリアが手袋や浴湯を香らせたことから “ネロリ” の名が広まりました。
香水として使われるビターオレンジの主な産地は、フランス、モロッコ、イタリア、ポルトガルなどになります。
どう違う?──ネロリ精油とオレンジブロッサム アブソリュート
ネロリ精油とオレンジブロッサム アブソリュートは、どちらもビターオレンジの花が原材料です。名前が違うので全くの別物だと思われがちですが、その抽出方法で2つに分かれたものになります。
項目 | ネロリ精油(水蒸気蒸留) | オレンジブロッサム アブソリュート(溶剤抽出) |
---|---|---|
抽出プロセス | 花+水蒸気を加熱し揮発成分を凝縮 | ヘキサン等で “コンクリート” → エタノール精製 |
価格感 | 高価(希少・低収率) | 同等〜やや高価(採油率は若干高いが工程が多い) |
色調 | 無色〜淡黄色 | 琥珀〜茶色の粘性液体 |
香りの違い
ネロリ
- 第一印象:みずみずしいシトラスとグリーン、少しのビター感。
- 質感:軽やか・“ソーピー”・清潔感。
- 主な香気分子:リナロール、リモネン、α‑テルピネオールなどが上位を占める。
- 揮発位置:トップ~ミドル。香り立ちが早く、コロン系に欠かせない。
オレンジブロッサム アブソリュート
- 第一印象:ハチミツのような濃密な甘さと白花のクリーミーさ。
- 質感:温かく官能的。インドール由来のわずかなアニマリックが奥行きをプラス。
- 主な香気分子:メチルアントラニレート、ネロリドール、インドールなど重めの成分が顕著。
- 揮発位置:ミドル~ベース。フローラル/オリエンタルの“核”を形成。
ネロリ/オレンジブロッサムの香水での代表的な使われ方

スタイル | 代表例(発売年) |
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クラシック・オーデコロン | 4711のオリジナル オーデコロン (1792) |
モダン・ラグジュアリーコロン | トムフォードのネロリ・ポルトフィーノ (2011) |
ホワイトフローラル/オリエンタル | セルジュ・ルタンスのフルールドランジェ (2003) 等 |
ユニセックス・シトラスウッディ | ル ラボのネロリ 36 (2006) 等 |
ネロリとオレンジブロッサムのレイヤリング&調香ヒント
- 朝の軽快さを長持ちさせたい香水 → ネロリ+ベルガモット+プチグレンでシトラスグリーンの持続を強化。
- 夜向けに官能性を追加したい香水 → オレンジブロッサム アブソリュート+バニラ/アンバー/ムスクで甘く深いドライダウンに。
- 両者をブレンド → つけ始めはネロリの爽快さ、乾くとxアブソリュートの蜜感――“時間差グラデーション”を演出。
まとめ
- 同じ花・異なる抽出:蒸留=ネロリ(軽やか・シトラスグリーン)、溶剤=オレンジブロッサム アブソリュート(甘く濃密)。
- 香りの差:ネロリは“石けん的クリーン”、アブソリュートは“ハニー&インドールで官能的”。
- 希少性と価格:どちらも手摘みで低収率。ネロリは約 1 tの花→1 kg油、アブソリュートも0.7–1 tで1 kgとわずか。
- 用途:ネロリ=トップやユニセックス系の透明感/アブソリュート=ミドルでフローラルやオリエンタルのボディ。
- 代表作を体感:4711で“クラシック”、ネロリ ポルトフィーノで“地中海の風”、Fleurs d’Orangerで“夜の白花”を嗅ぎ比べると理解が深まる。