サンダルウッドってどんな香り?

サンダルウッド

サンダルウッドは「温かいミルクをかけた木」のような、クリーミーでほんのり甘いウッディな香りが特徴です。インド産は濃厚でバターのよう、オーストラリア産は軽くてグリーン 。芳香心材に含まれるサンタロールが数十年も香りを保つため「香木の王」と呼ばれます。

香水を長もちさせる土台(ベースノート)として欠かせず  、気分を落ち着かせつつ集中力も上げるという研究もあります 。

サンダルウッドって何?

  • インドやオーストラリアなどに育つ香木で、木の芯からとれるオイルが香ります  。
  • 香りの主役はα‑サンタロールとβ‑サンタロールという成分で、木の甘さとクリーム感を生みます。

香りの主成分と科学的背景

主成分香りへの寄与備考
α‑サンタロールクリーミーで甘いウッディ神経鎮静作用が示唆
β‑サンタロールバルサミックでややスパイシー持続性に寄与 

香りをイメージしよう

感じるニュアンス例え
クリーミー・ミルキー温めたミルクティー 
ほんのり甘いバニラアイスの後味
ウッディで温かい削りたての鉛筆+ほんの少しのスパイス 

産地でこんなに違う

  • インド(マイソール)産: 濃厚でバターのようにリッチ。甘さが強め 。α・βサンタロール含有率が 70–90 %。
  • オーストラリア産: さっぱりグリーンでドライ。軽やかに香る 。α・βサンタロール含有率が 20–40 %。

香りの違いを表にするとこんな感じ。

項目インド産(マイソール)オーストラリア産
香り濃厚でバターのように滑らか乾いた木屑+ハーブの青さ
サンタロール比率70–90 %20–40 %
ニュアンスミルク、ココナッツ、甘い樹脂グリーン、シダー様、スモーキー
代表的香水シャネル N°5 などキリアン・パリ セイクレッド ウッド など

香水の中での役割

  1. ベースノート(最後まで残る土台)
    • 揮発しやすいトップ/ミドルノートを“接着”し、持続時間を伸ばす力が高い 。
  2. ブレンドの名脇役
    • フローラル(ジャスミン、ローズ)、スパイス(カルダモン)、アンバー系と相性抜群。全体をまろやかにまとめます 。

サンダルウッド好きに人気の香水

香水ざっくり香り説明
ル ラボ サンタル 33煙るような木とレザーが都会的 
ディプティック タムダオ森で深呼吸するようなクリーンウッド 
シャネル N°5アルデヒド花香に甘い木の厚み 
バイレード ジプシーウォーターパインニードル+シトラスに柔らかなサンダルウッドと琥珀

香りがもたらす気分

  • サンダルウッドの匂いを吸うと脈拍が上がりつつ注意力も高まった、という小規模研究があります 。
  • 癒やしと同時に「しゃっきり感」も得られるのが人気の理由です 。

環境とこれから

  • インドの天然木は減少気味で、オーストラリアでは約2万ヘクタールの植林が進行中 。
  • 資源を守るため、合成サンダルウッド(サンダルウッド・ベース)も活用されています 。

合成サンダルウッド

現在、合成サンダルウッドは「香りを支える柱」として調香に不可欠な存在です。

合成サンダルウッド(サンダルウッド様合成香料)は、天然マイソール油の不足と価格高騰をきっかけに1970 年代に誕生しました。代表分子の Sandalore®、Ebanol™、Polysantol®、Javanol® は、安価なテルペン原料から多段階合成され、天然油よりも拡散力と処方自由度が高く、乱伐リスクをゼロにする一方、成分の単一性ゆえに香りの奥行きや IFRA使用上限といった課題も残ります。さらに近年は酵母発酵で天然同一サンタロールを作り出すバイオテクノロジーが台頭し、「天然 vs. 合成」の二項対立自体が溶けつつあります。

  • 歴史:1970 年代 Sandalore® → 2000 年代 Javanol® へ高性能化。
  • 利点:安定供給・強拡散・サステナブル。
  • 課題:香りの奥行きと一部分子の使用上限。
  • 未来:酵母発酵で“天然同一+低環境負荷”を実現するハイブリッド時代へ。

なぜ合成が必要になったか

  • インド産マイソール (Santalum album) は30 年以上育てて心材を水蒸気蒸留し、3–6 %しか精油が得られません 。
  • インド政府は乱伐抑制のため2001 年に商業輸出を禁止し、価格は1 kg 数千 USDに高騰しました。
  • 需要を満たすため香料会社は テルペン骨格を再構築した“サンダロール類似分子” を開発し、1970 年代に Sandalore® が初の量産品として市場投入されました 。

主要合成サンダルウッド分子と香気

分子(社・発表年)主な原料・合成経路香り特性・推奨濃度
Sandalore®(Givaudan, 1970s)カンフォレニックアルデヒド由来多段階還元 暖かいミルキーウッド、トップで即発香。1–5 %
Ebanol™(Givaudan, 1980s)同上ウッディ・ムスク調で厚み 
Polysantol®(Firmenich, 1997)α‑ピネン誘導体から6工程 クリーミーで長持ち、~2 %
Javanol®(Givaudan, 2003)α‑ピネン→シクロプロパン化→還元 天然比8倍の香気強度、0.1 % で十分
Okoumal® など新世代高 MW のジオキソラン骨格 アンバーウッディを補強、0.5 %

豆知識:Javanol と Polysantol を 9:1 でブレンドすると、マイソール油に近い乳脂感と残香カーブを再現できるとプロ調香師が推奨しています 。

天然との比較

観点天然マイソール油合成サンダロール類
成分数100 種以上混在単一~数種
香り立体的・バター様拡散強・シャープ
栽培/製造30 年育成+蒸留数日~数週間バッチ
規制比較的緩いIFRA 上限あり (例 1.1 %)

まとめ

初心者でも覚えておいた方が良いポイントは3つ。

  1. ミルク入りの温かい木の香り
  2. インド産は濃厚、オーストラリア産は軽やか
  3. 香水では“最後まで残る土台役”

この3つを頭に入れておけば、お店でサンダルウッドの香りを試すときに「自分が好きなタイプかどうか」をすぐ判別できます。