ジャスミンってどんな香り?

ジャスミンの花

香水の原材料としてのジャスミンは「甘く官能的なのに、どこか瑞々しく爽やか」という両義的な魅力を併せ持つ白い花です。香水の世界では ジャスミン・サンバック(アラビアンジャスミン)と ジャスミン・グランディフローラム(スパニッシュ/グラースジャスミン)が二大スター。前者は南国フルーツのように弾ける明るさ、後者は蜂蜜を溶かしたかのような深みで愛されています。さらに小規模ながらジャスミン・オフィキナレ(コモンジャスミン)やアウリクラツム(ジュヒ)も個性的なアクセント役に使われます。

ジャスミン香りの三層構造

  1. ホワイトフローラルの甘さ – 「ミルキー」「クリーミー」と形容される主香調はベンジルアセテートやリナロールなどのエステル類が担います。
  2. フルーツとグリーンの爽やかさ – とくにサンバックは“みずみずしい青いマンゴー”のよう、と評されます。
  3. インドール由来のアニマリックな陰影 – 自然精油には約2.5%のインドールが含まれ、わずかに動物的・セクシーな余韻を添えます。

この甘・爽・妖のバランスが、ジャスミンを“一輪で完成する香り”にしているのです。

主に使われる2つ(+1)のジャスミン種

学名(通称)主産地香りの特徴代表香水例
ジャスミン・サンバックインド、フィリピンフルーティー&グリーンで拡散力大グッチ〈ブルーム〉は大ぶりの花束のようにサンバックを前面に据えます。
ジャスミン・グランディフローラムエジプト、フランス・グラース蜂蜜のように滑らかでクラシカルシャネル〈N°5〉はグラース産ジャスミンを独占契約で使用。
ジャスミン・アウリキュラタムインドスパイシーで野趣のある甘さニッチ香水セルジュ・ルタンス〈サラサン〉などでアクセントに。

香りを形づくる主な化学成分

  • ベンジルアセテート:華やかな甘さとわずかな梨のような酸味を付与。
  • リナロール:フローラル&柑橘調の“空気感”で重さを中和。
  • ジャスモン酸メチル:トロピカルフルーツティーのような深み。
  • インドール:アニマリックで“夜咲き”の妖艶さを演出。 

IFRA(国際香粧品香料協会)はアレルゲン・感作リスクに基づき天然ジャスミンの使用量をガイドラインで調整しています。

ジャスミンが主役の代表香水

ジャスミンを使った香水
香水ブランド主役ジャスミン香調のポイント
ブルームグッチサンバック花園に飛び込んだような“生花感”。
N°5シャネルグランディフローラムアルデヒドと重ねたシルクのような深み。
エイリアンティエリー・ミュグレーサンバックジャスミン×アンバーの異国的コントラスト。
ジャスミン 17ル ラボグランディフローラム“短い処方”で生花の息吹を強調。
ジャドールディオールミックス(サンバック+グランディフローラム)フルーティーに始まり、なめらかにドライダウン。

ジャスミン香水の選び方

サンバック — 透き通る夏の光

  • 香りの特徴:青いマンゴーや柑橘のようなフルーティさと、夜咲きの花ならではの拡散力。
  • おすすめシーン:湿度の高い日本の夏や昼間の外出。汗ばむ肌でも重くならず、爽快さが続きます。
  • 代表的な香水:ジョー マローン〈ジャスミン サンバック & マリーゴールド〉は“サンバックの輝き”を全面に押し出した一本。

グランディフローラム — 蜂蜜のヴェルベット

  • 香りの特徴:クリーミーで蜂蜜のようにコク深く、クラシカルな余韻。
  • おすすめシーン:気温が下がる秋冬や、ドレスアップが必要なフォーマルシーン。香り立ちが穏やかで、時間とともにエレガントに沈み込みます。
  • 代表的な香水:シャネル〈N°5〉は南仏グラース契約農園のグランディフローラムを贅沢に使用し、深みの核としています。

インドールが苦手な人は「ヘディオン」をチェック

  • ヘディオンとは?:ジャスミンを思わせる合成香料で、透明感とレモンのような微かなシトラス感が特徴。
  • 代表作:ディオール〈オー ソバージュ〉はヘディオンを初めて使い、“空気を含んだジャスミンの清涼感”を実現した名香。
  • 成分表示のヒント
    • 日本向けパッケージでは「ヘディオン」または「メチルジヒドロジャスモネート」と書かれていることが多い。
    • 原料一覧が英語の場合は “Hedione” や “Methyl Dihydrojasmonate” を探してください。

産地表示でわかる“こだわり度”

産地表記があれば、香りの個性だけでなく、作り手の姿勢読み取れます。

  • グラース産:南仏グラースは高品質グランディフローラムの聖地。シャネルはムル家と長期契約を結び、手摘み収穫を続けています。
  • エジプト産:世界生産量の大半を占め、近年はジボダンが現地農家と協働し有機肥料やフェロモントラップを導入。品質+環境配慮の両立を図っています。

まとめ

  • 透明感重視ならサンバック、格調高い深みを求めるならグランディフローラム。
  • 動物的な濃さが苦手な人はヘディオン系のジャスミンの香りがする香料が快適。
  • 産地や原料表示をチェックすると、香り選びがもっと楽しく、安心感もアップします。

自分の“なりたい雰囲気”と季節に合わせて、ぜひジャスミンのバリエーションを使い分けてみてください。