セルジュ・ルタンス

セルジュ・ルタンスは、写真家・映像作家セルジュ・ルタンスが手掛けるフランスのニッチフレグランスメゾンです。1992年に発表した「フェミニテ デュ ボワ」を皮切りに、“モロッコの香料市場とパリの前衛性を融合させた重厚な芸術香”で知られています。トップで甘味とスパイスを一気に放ち、ドライダウンでシダーウッドやアンバー、ハチミツが体温と溶け合う構成が多く、「官能と影」のコントラストが高く評価されています。

代表作と香調ハイライト

  • フェミニテ デュ ボワ:熟したプラムとジンジャーが立ち上がり、ドライなシダーが包み込む“スパイシー・プラムウッド”。
  • シェルギイ:干し草とハチミツの甘さにタバコ葉とアンバーが重なる“砂漠の熱風”を思わせるオリエンタル。
  • アンブル スュルタン:濃厚なラブダナムにバニラとベンゾインが溶け、スモーキーな樹脂が闇を照らす“黒琥珀”のようなアンバー。
  • ラ フィーユ ド ベルラン:ローズにベリーの酸味と胡椒が交差し、メタリックな血色を帯びた“反逆の薔薇”。

セルジュ・ルタンスらしさと評価

セルジュ・ルタンスの作品は、トップで果実やスパイス、樹脂を一気に放ち、ベースで乾いた木材・アンバー・ハチミツが肌と溶け合う三幕構成が多く採用されています。濃厚ながらも緻密に層を重ねるブレンドにより「官能と影が交錯するドラマ」を描き出す点が高く評価され、“一滴で劇場が開く”という比喩もしばしば引用されます。

人気作のほとんどはオードパルファムとして流通し、持続は長めながら投影は比較的穏やかで、香りが肌に近づくにつれてスモーキーな樹脂やドライウッドの陰影が現れる設計です。最高級限定ラインの〈セクション・ドール〉では、より粘性の高い樹脂やアニマリックムスクを用いて「香りの密度」を極限まで高める挑戦が行われています。

総じて、セルジュ・ルタンスの香水は、プラムや干し草、ハチミツ、スパイスといった濃厚な素材を、シダーやアンバーの乾いた骨格に絡めることで、唯一無二の世界観を確立しています。