庭園のフレグランス

ルメスの「ジャルダン(庭園)」コレクションは、調香師が世界各地の庭を旅し、その光・水・植生を“水彩画のような透明感”で描くことを理念に誕生しました。ジャン=クロード・エレナ氏がミニマルなタッチで初期を、クリスティーヌ・ナジェル氏が後期を手がけ、シリーズ全体に共通するのは軽やかなシトラスやグリーンの立ち上がりと、肌に溶ける自然な残香です。

各フレグランスの香調

  • 地中海の庭(2003):イチジクの葉と木陰のシダーにシトラスが降り注ぎ、ミルキーで湿った地中海の午後を想起させます。
  • ナイルの庭(2005):青マンゴーとグレープフルーツがみずみずしく弾け、ロータスやシカモアウッドが水辺の青い影を残します。
  • モンスーンの庭(2008):カルダモンとジンジャーに濡れたスイカが重なり、雨上がりのインド南西部に漂う湿った空気をスパイシーに表現しています。
  • 屋根の上の庭(2011):パリ本店の屋上庭園を映し、リンゴとバジル、マグノリアが揺れる快活なフルーティ-グリーンです。
  • 李氏の庭(2015):金柑とジャスミンに朝露を帯びたヴェチヴェールが溶け込み、静かな中国庭園を思わせるアロマティック-シトラスです。
  • ラグーンの庭(2019):マグノリアとピトスポラムが塩気を含む潮風に乗り、わずかにソープを思わせる清潔感が漂います。
  • シテールの庭(2023):ベルガモットとライムの皮の渋みにドライなピスタチオが絡み、ギリシャの乾いた日差しとオリーブの木陰を表すシトラス-ウッディです。

共通DNAと評価

すべての作品は“旅と庭”という詩的テーマを共有し、トップは明るい柑橘やグリーンで開き、ラストはウッディやムスクで穏やかに溶け込みます。これにより「庭を散策するように香りが移ろう」と欧米レビューで高く評価され、流行に左右されないユニセックスな透明感がシリーズの魅力とされています。