エルメス

エルメスは、馬具工房に端を発するメゾンのクラフツマンシップを嗅覚芸術にまで昇華し、ジャン=クロード・エレナからクリスティーヌ・ナジェルへと受け継がれる「透明感のある自然描写」と「肌に溶け込む上質感」で高い評価を得てきました。

代表作と香調ハイライト

  • テールドゥ エルメス:オレンジとグレープフルーツのキリッとしたシトラスに、フリントとベチバーが鉱物質のドライさを添える“ミネラル シトラス ウッディ”です。
  • オー デ メルヴェイユ:ビターオレンジと塩気を帯びたアンバーグリスが交差し、ウッディでスパークする“ソルティ アンバー”を描きます。
  • エリクシール ド メルヴェイユ:濃厚なオレンジマーマレードにレジンとチョコレート調バルサムが重なり、温かな“グルマン アンバー”へ変化します。
  • ツイリー ドゥ エルメス:ピリッとしたジンジャーにチューベローズとサンダルウッドが絡む“スパイシー フローラル ウッディ”で、若々しい躍動感を表現します。
  • ナイルの庭:青マンゴーとグレープフルーツがみずみずしく開き、ロータスとシカモアウッドが川辺の緑陰を思わせる“フルーティ グリーン ウォーター”です。
  • H24:クラリセージのアロマとメタリックなスコルネオール、ローズウッドが溶け合う“ハーバル メタル フゼア”で、都会的な清潔感を宿します。
  • ジュール ドゥ エルメス:ガーデニアとスイートピーが織り成す優美な“フローラル ブーケ”が一日を通して穏やかに続きます。

エルメスらしさと評価

エルメスの香りづくりは、素材を“点描”のように置くエレナ時代の透明設計と、ナジェルが加えるやや官能的な深度とが調和し、トップの鮮度とベースの柔らかなレジンやムスクで「呼吸するように変化する残香」を生み出しています。 こうした軽やかながらも奥行きあるブレンドは、「過度に主張しないラグジュアリー」として愛好家から称賛を受ける一方、重厚な甘さを好む層にはやや控えめに映る場合もあるようです。

それでも、季節やシーンを問わず纏えるユニセックスな使い勝手と、アーティスティックな物語性は揺るぎない魅力となり、多彩なラインアップが「エフォートレスな上質さ」を体現するメゾンならではの個性を確立しています。