ディオール
ディオールは1947年のクチュール誕生と同時に自作の「ミス ディオール」を披露して以来、花のラグジュアリーと最先端分子を融合させた香りで“オートクチュールのように纏うフレグランス”を提案してきました。調香を率いてきたフランソワ・ドゥマシーは「丸みのある余韻こそディオールらしさ」と語り、2021年以降はフランシス・クルジャンがその精神を現代的に刷新しています。
代表作と香調ハイライト
- ジャドール:ベルガモットとメロンがきらめき、イランイランとジャスミンが溶け込む“黄金のブーケ”。最後はムスクが陽射しのような丸みを添えます。
- ミス ディオール(2021):センティフォリアローズの蜜と胡椒の甘辛さを中心に、スズランとピオニーが重なり、パチョリが土壌のような奥行きを残す“花束のミルフィーユ”。
- ソヴァージュ オードトワレ:カラブリア産ベルガモットとブラックペッパーが鋭く立ち、アンブロクサンがミネラルな岩肌を思わせる“荒野のフゼア”。
- プワゾン:ベリー系の甘酸っぱさとミントの利いたチューベローズが交差し、バニラと樹脂が濃密に煙る“禁断のオリエンタル”。
- ディオール オム(2020):シダーとカシミアウッドの温かいウッド骨格にベチバーとスパイスが絡む“モダンウッディ”。従来のアイリスを抑え、よりドライに再構築しました。
ディオールらしさと評価
ディオールの香水は、トップで鮮烈なシトラスやスパイスを瞬時に放った後、ベースではムスク・アンバー・ウッドが滑らかに肌と同化し、昼夜や性別を問わず「エレガンスと力強さの二面性」を演出することが多いです。「抽象画のように多層でありながら、着け心地はシルクのように軽い」と評され、ジャドールの太陽的フローラルからソヴァージュのフゼアまで、多彩なラインが常に時代の空気を映す点が高く評価されています。