ディオールファーレンハイト

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1980 年代末、パワースーツとスポーツカーが男性像を塗り替えた時代に生まれた「ファーレンハイト」は、“熱”と“冷気”という相反する要素を一つのボトルに閉じ込めたディオールの問題作です。シシリアンマンダリンとベルガモットが放つ高揚感は、バイオレットリーフのメタリックな青さ――しばしば「タイヤを替えたばかりのガレージ」「給油直後のスタンド」と評されるガソリン調――によって一瞬でクールダウン。その温度差が生み出す電撃的トップは、賛否入り混じる口コミが溢れ、“クセになる”か“二度と嗅ぎたくない”かを左右する関門です。
やがて熱を帯びたドライウッドとスパイシーなナツメグが加わり、青さはレザーへと溶け込みます。ミドルからラストにかけて漂うのは「ヴィンテージの革ジャケット」と形容される渋みと、「暖炉の残り火」のようなアンバーの温もり。1988 年当時の重厚なフォーミュラこそ影を潜めたものの、現在のロットでも6〜8 時間の持続と半径2 mの拡散は健在で、衣服に仕込めば翌朝まで残香が続くという口コミが多いです。
ドライダウンの丸い甘さゆえに、レザームスクに親しんだ女性や“ガソリン×フローラル”のギャップを楽しむ若い世代からも再評価の声が上昇。クラシック・メンズの象徴としてだけでなく、「大人の色気を纏うユニセックス革香」として現在にも生き続けています。
香りの構成
- トップノート
- マンダリンオレンジ,ベルガモット,ラベンダー,ナツメグフラワー:シトラスの鋭さとラベンダーのハーバルが弾け、「ガソリンを思わせるメタリックな青さ」という口コミもあるほどの香りが一気に立ち上がります(“カメムシ” “瓜” とも評される賛否の的)。短時間で角が取れ、ナツメグがほのかなスパイスと温度をチャージ。
- ミドルノート
- バイオレットリーフ,シダー,サンダルウッド,ナツメグ:バイオレットリーフがオゾンを帯びた湿ったグリーンを供給し、シダー&サンダルがドライウッドの骨格を構築。口コミでは「メロンの青みがレザーへ溶け込む」「ハーレーの革ジャケット」と形容され、青さと渋さの綱引きが最大の見せ場に。
- ラストノート
- レザー,ベチバー,アンバー,ムスク:スモーキー過ぎないヴィンテージレザーを中心に、ベチバーの乾いた土気とアンバーの温もりが融合。「バーの薄明かりで感じる残り香」「寝香水に最適」との声も多く、肌を包む丸みのある甘さでフィニッシュ。
おすすめの季節と時間帯
春 夏 秋 冬
日中 夜
男性向け、女性向け
男性 女性
鋭いレザーとウッディが描く“クラシック・メンズ”像は健在ですが、バイオレットの甘さやムスクのドライダウンがユニセックスな余白を残します。実際「レザームスク好きの女性が愛用」「瓜系の青さが逆に清潔で良い」といった声も。ポイントは量と温度――体温の高い方は 1 プッシュでも十分に色気が立ち上がります。
属性
フレグランスホイールとは?分類
- フレッシュ系・・・アロマティック、シトラス
- ウッディ系・・・ドライウッド
ラベンダーとナツメグがもたらすアロマティックな清涼感に、ベルガモットとマンダリンの鋭いシトラスが重なり、トップに“冷たい火花”を散らします。ミドル以降はバイオレットリーフの青さとともにドライなウッド&レザーが中心へ移行し、スモーキーになり過ぎない“温かいドライダウン”を形成します。
補足分類(18の属性からの分類)
- アロマティック
- アンバリー
- ウッディ
- グリーン
- シトラス
- スパイシー
- フレッシュネス
- ムスキー
- レザー
シトラス&ハーブのフレッシュな立ち上がり(アロマティック/シトラス/フレッシュネス)から、ナツメグの温かい刺激(スパイシー)、バイオレットリーフの湿った青さ(グリーン)、そしてレザーと乾いたウッドのコア(レザー/ウッディ)へと推移。ラストはアンバーとムスクが官能を添え、骨太でありながら丸みを帯びた余韻を残します(アンバリー/ムスキー)。
持続時間
オードトワレ
- 香料の濃度・・・約5~8%
- 持続時間・・・約3~4時間
ファーレンハイトの香りが似合うイメージ・人物

静かに闘志を燃やすクラシックカー整備士
- 40代の男性。都内のガレージでクラシックカー専門の整備を手がける職人。口数は少ないが、道具にも身なりにも清潔感がある。
- 好むファッションは、オイルのついた手にも馴染むレザーグローブと、洗いざらしの白Tシャツ。
- 香りは“汗と機械油の隙間に溶け込む個性”として、自分の仕事の延長にあるべきものと捉えている。
美術館で照明を調整する照明プランナー
- 30代後半の女性。都心のミュージアムで照明設計を手がける技術系アーティスト。ヴィンテージレザーのジャケットを羽織るのが定番。
- 香りは“個性的だが押しつけがましくない”を基準に選び、パウダリー系よりもスモーキー&レザー系を好む。
- 「香水は名刺の代わりになる」と考え、香りの後味に“人となり”がにじんでほしいと思っている。
週末だけバイクで旅する理学療法士
- 40代前半の男性。平日は病院で患者に寄り添う穏やかなセラピストだが、週末は大型バイクで山道を走る。
- 白衣の下に潜む“レザーと焚き火”のような香りが、彼のもう一つの顔。
- 香水は“距離感を縮めるためでなく、自分の中にある熱量を再確認するため”に纏う。
深夜のバーで静かに本を読む編集者
- 50代の男性。文芸誌の編集者として30年近くペンを握ってきた。夜は馴染みのバーで、煙草の煙と共に洋酒の香りをまといながら読書をするのが習慣。
- 香りに求めるのは“時間の堆積”。トレンドではなく、過去の記憶にアクセスできるクラシックなものを愛用。
デザイン事務所の創業者兼クリエイティブ・ディレクター
- 30代後半の女性。建築やグラフィックなど複数の分野に精通し、スタッフからは「思考もビジュアルもシャープ」と憧れられている存在。
- スーツでもスニーカーでも決まるような香りを求めており、選ぶのは“青さ”と“熱”を併せ持つファーレンハイト。
- 香水は“プレゼン前の深呼吸”であり、自分を最適化するスイッチでもある。
レザーとアンバーの厚みが冷気で引き締まり、秋冬の夜にこそ真価を発揮します。とはいえトップの柑橘とハーバルが軽快に立ち上がるため、春の朝でも重たくなり過ぎません。オフィスで着用する場合は 1~2 プッシュに留め、退勤前にもう 1 プッシュ追加すれば、バーやディナーでレザーの艶が際立ちます。